CLINIC
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こんにちは、アンデュースキンケアクリニック院長の山崎です。
今回は前回に引き続き、ニキビの重症度・治療(保険診療)について、詳しくご紹介させていただきます。
ニキビの重症度は、日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)・酒皶(しゅさ)治療ガイドライン 2023」で示されていて、ニキビの数によって分類されます。
ニキビは少なくて小さいうちに治療をすると、比較的治りが早いです。重症・最重症化してからの治療は、保険・自費診療ともに時間や回数がかかってしまいます。またニキビ炎症後の色素沈着や瘢痕(はんこん)、ニキビ跡・クレーターが強く出てしまい、その後の美容面で悩まれる方が非常に多いため、軽症のうちに治療を開始することが好ましいです。重症・最重症の方でも手遅れということはありません。辛い症状で悩んでいらっしゃる方は、いつでもご相談ください。
原因やその時の症状によって、処方する内容は異なるため、医師が診察で状態を確認させていただいた上で、適切な薬を処方させていただきます。まずは当院でよく使われている、代表的な外用薬をご紹介します。
抗菌薬は細菌を壊したり、増えるのを抑制したりする働きがあります。細菌はたんぱく質を合成して生命維持や増殖をしていきます。当院で処方しているダラシンTローションという薬には、たんぱく質が合成されるのを抑制するため、アクネ杆菌の増殖を止めるのを助ける効果があります。また使用感としては、ヒリヒリ感などの刺激が少ないのが特徴です。長期的に使用すると薬剤耐性(アクネ杆菌に対して薬が効かなくなること)がついてしまうため、急性炎症期の初診から3~4か月くらいまでにとどめた方が良い場合もあります。
当院では、ベピオローションという名前で処方している薬です。強力な酸化作用があり、アクネ杆菌の細胞を壊すことでアクネ菌の数を減らし、赤ニキビを改善します。また角質層のたんぱく質を変性させて剥がれやすくする作用もあり、毛穴の詰まりを改善して白ニキビや黒ニキビにも効果があります。ベピオローションは2023年5月に新しく発売された薬剤で、従来のベピオゲルに比べて水分含有率が高くなったため、独特のヒリヒリ感が軽減されています。角質を剥がす効果があり乾燥しやすくなるため、保湿剤を併用することが好ましいです。
当院では、ディフェリンゲルという薬を処方しています。2008年に保険適用となった薬剤で、それ以前はアクネ杆菌を減らす抗菌薬で治療していました。アダパレンには、アクネ杆菌を減少させる力はあまりありませんが、ニキビを直接治療できる画期的な薬剤として登場しました。アダパレンは顆粒層から角質層になる段階でたんぱく質の合成を抑制する働きがあります。ターンオーバーが正常化することで角質層が薄くなり、毛穴詰まりが解消されニキビの改善が期待できます。
ディフェリンゲルが登場するまでは、ターンオーバーを整えるとなるとケミカルピーリングを病院で行わなければならないため、自宅での治療がありませんでした。病院で行うピーリングと比較すると弱いですが、病院で施術をしたら終わりではなく、自宅でも治療できるようになりました。またニキビを治療するだけではなく、初期段階のニキビになりかけのものに対してはニキビにならないように抑制する働きも持っています。
使用中は約80%の方がヒリヒリ感を感じると報告があるため、使い始めは使用量を少なめから始めたり、保湿剤と併用して乾燥しないようにしたりなど、工夫をして上手に付き合っていくことが求められます。
薬剤によって適応となるニキビが異なるため、ニキビの状態に応じて使用する薬剤を選択し、必要であれば併用していくことで治療していきます。
肌は乾燥していると、潤いが足りないと判断して皮脂を多く分泌してしまうことがあり、スキンケアが重要です。皮脂分泌を正常に保つ目的で、保湿は重要です。特に冬場は化粧水と乳液だけだと、蒸発して出て行ってしまうので、保湿クリームで蓋をしてあげるとより保湿効果が高くなります。当院ではヒルドイドとヘパリン外用薬という保湿剤を処方しています。ヒルドイドは軟膏とローションがあり、ヘパリン外用薬には泡とスプレーがあります。目的に応じて、使用しやすいものを選択します。
ヒルドイドソフト軟膏:しっかり厚く塗りたい時・部分(特に乾燥している・ヒリヒリ感がある所)
ヒルドイドローション:さらっとしているので朝のメイク前やべたつきが苦手な方向き
ヘパリン外用泡状スプレー:広範囲に薄く素早く広げたい時
ヘパリン外用スプレー:広範囲に噴霧したい場合や手が届かない所に塗りたい場合(ボトルをさかさまにしても噴霧できます)
外用薬のみではなく、内服治療を同時に行うことでより効果が期待できます。内服薬は短期で使用するものと、長期的に継続使用するものがあります。長期的に内服する薬に関しては、3か月以上は継続して内服することが望ましいです。内服治療というと、学校や仕事に行かれている方は飲み忘れが多くなることや、面倒だからといった理由で好まれないことがあります。外用薬と併用していくことでより良い結果になりますので、最低3か月は頑張って継続していきましょう。
アクネ杆菌を減らす目的で使用し、赤ニキビに効果があります。抗生物質の中でも、マクロライドという種類の抗生物質で、細菌のたんぱく質が作られるのを阻害して増殖を抑えます。また免疫細胞にも作用して、ニキビの炎症の原因となる成分を抑制することができます。
抗生物質は細菌に対して非常に効果がありますが、長く飲み過ぎてしまったり薬を途中でやめてしまったりすると耐性ができ、十分な効果が得られないことがあります。ルリッドに耐性ができた場合は薬を変更しなければなりませんので、医師の処方の通りのしっかりと飲み切っていただき、短期集中で治療していく必要があります。
アスコルビン酸(ビタミンC)とパントテン酸カルシウム(ビタミンB群)という2種類のビタミンが混ざったものです。
ビタミンCは抗酸化作用があり、活性酸素が過剰に産生されることを防ぐ役割があります。通常、活性酸素が持つ酸化作用は強い殺菌・抗菌作用があるためアクネ菌と戦ってくれます。しかし大量に産生されると、あまりにも殺菌・抗菌作用が強すぎてしまい、アクネ杆菌だけではなく正常な肌までも攻撃してしまって逆に炎症の原因となってしまいます。ビタミンCは活性酸素を正常に保つことで、ニキビやニキビ跡の色素沈着、赤みなどの改善が期待できます。
パントテン酸は糖や脂質、たんぱく質の代謝をする酵素の働きを促進したり、皮脂の分泌を抑制したりしてくれる作用があります。またビタミンB5は肌のバリア機能を回復してくれる効果があり、新たなニキビができることを予防してくれる働きもあります。さらにビタミンCと一緒に内服すると、ビタミンCの血中濃度をより高めてくれる相乗効果があります。
ビタミンEの内服薬です。ビタミンEは末梢血管障害を改善する効果があり、肌の血行を良くする働きがあります。血行が良くなると、肌のターンオーバーが促進されて古い角質が剥がれ落ちます。ニキビ肌の方はターンオーバーが乱れてしまっていることがありますので、正常になるように働きかけます。またシナールと同様に抗酸化作用がありますので、シナールと一緒に内服するとさらに効果が得られます。
皮膚や粘膜が作られるのを助ける、ビタミンB6の内服薬です。ビタミンB6はニキビの原因となる皮脂分泌を抑制する効果があるため、ニキビの予防ができます。またニキビで肌が炎症を起こした後、メラニン色素が過剰に増えてしまわないよう抑制することで、色素沈着を予防することができます。
糖質や脂質、たんぱく質の代謝を助ける役割があります。特に脂質の中でも、脂肪酸の代謝にかかわりを持っていて、角質層が正常に作られるのを助けます。脂肪酸の産生を促すことで正常な角質層を作り、肌のバリア機能を高める効果があります。またビオチンは炎症やかゆみを引き起こすヒスタミンを抑える働きもありますので、過剰な炎症やかゆみを抑えることができます。
L-システインの内服薬です。L-システインはターンオーバーを促進させる働きがあり、抗酸作用のあるアミノ酸です。肌のターンオーバーを正常化することで、古い角質が剥がれ落ちニキビの治癒につながります。またシナールとユベラ同様に抗酸化作用があります。
10種類の生薬が混ざった漢方薬です。赤みやかゆみに対して作用し、また予防する効果もあります。肌の血管を拡張して血行を促進する働きがあります。また炎症や毒素を排出し化膿することを防ぐ効果もあり、肌が炎症を起こさないよう予防することができます。さらに炎症を起こしてしまっているニキビに対しては、炎症による膿を排出して腫れを改善する効果もあり、赤ニキビや黄ニキビに効果があります。長期的に内服することで効果を発揮する薬ですので、継続的に内服していくことが必要です。
17種類の生薬を配合した漢方薬です。起こっている炎症を抑え、発散させる働きがあります。熱や炎症を鎮める効果や殺菌作用があるため、熱を持った炎症性のニキビや細菌が繁殖している白ニキビに対して効果があります。
十味敗毒湯と同様に長期的に内服していただく必要があります。
ニキビに直接針を刺し、専用の器具で毛穴に溜まっている膿や皮脂を押し出します。針は毎回新しいものを使用し、器具は滅菌した清潔な物を使用しています。ご自分でニキビをつぶしてしまうと、清潔な状態を保てず、逆に感染してニキビがひどくなってしまうことがあります。医師が肌の状態を拝見し圧出させていただくことで、ニキビの治りがより早くなります。
今回のご紹介はここまでです。次回更新は9月中旬ごろ、「ニキビ治療の自費診療・施術の流れと頻度・まとめ」をご案内いたします。
ニキビ治療についてご興味のある方、是非お気軽にご相談ください。
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PROFILE
山崎 和紀(やまざき かずのり)
杏林大学医学部 卒業
杏林大学医学部附属病院 勤務
名古屋大学医学部附属病院形成外科 勤務
静岡済生会病院形成外科 勤務
虎の門病院形成外科 勤務
東京西徳洲会病院形成外科部長就任
2018年アンデュースキンケアクリニック院長就任
日本専門医機構形成外科領域専門医
日本美容皮膚科学会正会員
サーマクール認定医
アンデュースキンケアクリニック
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